噛み合わせが悪くて悩んでいる人も多いのではないでしょうか。噛み合わせが悪い場合、歯磨きがやりにくく虫歯になりやすいなど、さまざまな影響が考えられます。肩こり・頭痛・あごの痛みが出る可能性もあるでしょう。そのため噛み合わせの悪さは、放置できない問題と言えます。
噛み合わせは、適切な治療を受けることで改善可能です。また、日ごろからの習慣も見直す必要があると言えるでしょう。
この記事では、噛み合わせが悪い場合の影響、原因、治し方などについて紹介します。
目次
嚙み合わせが悪い歯の治し方
噛み合わせは、自分で治すことはできません。無理やり歯を押したりすれば、噛み合わせが余計に悪くなる危険性もあるでしょう。歯科クリニックを受診し、自身に適した治療方法を選択する必要があります。以下は、主な噛み合わせの治療方法です。
ワイヤー矯正
歯にワイヤーとブラケットを装着し、歯を移動させる方法です。装着すると取り外しが簡単にできないため、基本的には付けたままとなります。
項目 |
説明 |
治療方法 |
口の中を検査して治療方針や治療方法を決定します。検査は顔写真、口腔内、歯型、レントゲンなどで実施する方法です。 治療方針や方法が決定したら、ワイヤーとブラケットを装着します。 1ヶ月〜2ヶ月の頻度で通院し、ワイヤーの調整を行う流れです。 |
治療期間 |
1年~3年 |
おおよその費用 |
60万円~130万円 |
マウスピース矯正
マウスピースを装着し、歯を移動させる方法です。マウスピースは、一人ひとりに合わせた形で制作します。おおよそ1週間〜10日ごとに、マウスピースを交換して治療を行う形です。最低でも、1日20時間は装着する必要があります。
項目 |
説明 |
治療方法 |
口腔内のチェックやレントゲン、歯型などを確認し、治療方針や治療方法を決定します。 口の中を専用の装置でスキャンし、矯正シミュレーションを実施する方法です。矯正シミュレーションを行うことで、仕上がり具合を事前に確認できます。 治療計画を立て、治療期間を決定する方法です。マウスピースが出来上がるのは、おおよそ1ヶ月かかります。 マウスピースが出来上がり次第、治療を開始する手順です。 |
治療期間 |
1年~3年 |
おおよその費用 |
80万円~150万円 |
補綴治療
補綴治療(ほてつちりょう)とは、歯を削った後にセラミックを被せる方法です。他の治療方法に比べて期間が短く、歯の色や形、歯並びを自身で選ぶことができます。
ただし、被せたセラミックが取れたり欠けたりすることもある点がデメリットです。
項目 |
説明 |
治療方法 |
口腔内の状態を確認し、土台を作るために歯を削ります。被せるセラミックの色も確認する方法です。 仮歯を被せて、噛み合わせや見た目、違和感がないかなどを確認します。 仮歯で日常に問題がなければ、セラミックを被せる手順です。 |
治療期間 |
1ヶ月~3ヶ月 来院回数は、2~4回 |
おおよその費用 |
セラミック1本あたり、8~18万円 |
外科的治療
骨格のずれが著しい場合は、外科的な手術を行う必要があります。
項目 |
説明 |
治療方法 |
手術前にワイヤー矯正を実施します。その後、外科手術を行う方法です。 手術後、再びワイヤー矯正で噛み合わせを整えます。 噛み合わせが元に戻らないように、保定する手順です。 |
治療期間 |
手術前のワイヤー矯正:1年~2年 手術:1週間~3週間 手術後のワイヤー矯正:半年~1年 保定:2年~ |
おおよその費用 |
顎変形症の場合は、健康保険を治療に適用可能です。 健康保険を適用した場合は、おおよそ次の費用となります。 矯正治療の費用:30万円前後 外科手術の費用:30万円~35万円 |
【種類別】噛み合わせが悪い歯の例
噛み合わせの症状は、さまざまな種類があります。多くの人は、複数の種類を併せ持っている可能性があるでしょう。ここでは、噛み合わせの主な例を紹介します。
上顎前突
上顎前突(じょうがくぜんとつ)は、上側の前歯が出ている状態を言います。「出っ歯」のことです。上あごが前方に出ている場合と、歯だけが前方に出ている場合があります。
先天的な原因としては、前歯が大きいことが挙げられるでしょう。後天的な原因としては、前歯を舌で押す癖があったり、指しゃぶりしていたりすることが考えられます。
下顎前突
下顎前突(かがくぜんとつ)は、上あごよりも下あごが前方に出ている状態を言います。「受け口」のことです。
先天的な原因としては、あごの発達に問題があったことが考えられます。後天的な原因としては、下の歯を舌で押す癖です。
上下顎前突
上下額前突(じょうげがくぜんとつ)は、上と下の両方の前歯が前方に出ている状態を言います。唇を自然に閉じることができなかったり、うまく噛めなかったりすることがあるでしょう。
先天的な原因としては、あごの発達に問題があったことが考えられます。後天的な原因としては、上と下の歯を舌で押す癖です。
過蓋咬合
過蓋咬合(かがいこうごう)は、噛み合わせた際に上の歯で下の歯が隠れてしまう状態を言います。下の歯がほとんど見えない状態です。
先天的な原因としては、下あごが大きく、後ろに下がっていることが考えられます。後天的な原因としては、奥歯を失った場合です。
開咬
開咬(かいこう)は、噛んだ時に奥歯が噛みあっているのに、前歯が空いている状態を言います。
先天的な原因としては、下あごの成長に問題があることが考えられるでしょう。後天的な原因としては、舌の癖、口呼吸、指しゃぶりなどが挙げられます。
交叉咬合
交叉咬合(こうさこうごう)は、噛み合わせた時に、前歯が前に来たり後ろに行ったり交互になっている状態を言います。「クロスバイト」と呼ばれる場合もあるでしょう。
先天的な原因としては、生まれつきあごの大きさのバランスが悪いことが考えられます。後天的な原因としては、前に舌を出す癖です。
空隙歯列
空隙歯列(くうげきしれつ)は、歯と歯が離れていてすき間がある状態を言います。「すきっ歯」のことです。
先天的な原因としては、あごの骨と歯のバランスが悪い、成長段階で歯が無くなった、歯の本数が少ないことが考えられます。後天的な原因としては、舌で歯を押す癖があるなどがあるでしょう。
叢生
叢生(そうせい)は、歯が重なった状態を言います。別名「乱ぐい歯」とも呼ばれており、八重歯も叢生の一種類です。厚生労働省の調査では、噛み合わせが悪い日本人のうち、叢生は44.3%※を占めています。
先天的な原因としては、あごより歯が大きい場合です。後天的な原因としては、舌癖や指しゃぶりが考えられます。
※参考資料:厚生労働省「不正咬合の種類と実態」
噛み合わせが悪化する原因
噛み合わせは、先天的な原因だけでなく、日常生活での習慣など、後天的な原因も考えられます。以下は、噛み合わせが悪化する主な原因についての紹介です。
口呼吸
口呼吸の癖がある場合、口が常に開いている状態となるため、噛み合わせに悪影響を及ぼします。鼻で呼吸し口は閉じているのが、正しい呼吸です。
片側での咀嚼
いつも片側の歯でしか噛まない場合、噛み合わせが悪くなる可能性があります。片側の歯だけに力がかかった状態になるためです。そのため、バランスよく左右を使い分ける方法が良いでしょう。
舌や唇の癖
舌を上と下の歯の間から出す癖や、歯に乗せる癖がある場合、噛み合わせに悪影響を及ぼす可能性があります。また唇が開いた状態にしていたり、唇を噛んだりする癖がある場合、噛み合わせに悪影響が出るでしょう。
頬杖
頬杖すると、一方からあごの骨に力がかかります。日常の習慣になっている場合、噛み合わせが悪化してしまう原因になることがあるでしょう。
睡眠時の体勢
睡眠時の姿勢に関しても、噛み合わせに影響を与える可能性があります。睡眠時にうつ伏せ状態になる場合、歯に負担がかかる状況です。そのため、噛み合わせに悪影響を及ぼす原因になりえるでしょう。
食いしばり・歯ぎしり
歯ぎしりや、歯を食いしばることが癖になっている場合、噛み合わせが悪くなる可能性があります。歯ぎしりや食いしばりは、歯に大きな負担がかかるためです。
遺伝
歯の大きさやあごの大きさは、遺伝によって決定している場合が多いと言われています。そのため、親子のかみ合わせは似た状態になることがあるでしょう。そのため、遺伝によって悪くなる可能性があります。
悪い噛み合わせを放置する悪影響
噛み合わせが悪い状態を放置した場合、歯茎や歯に負担がかかったり、身体的な影響がでたりします。そのため、早急に治療をするのが良いと言えるでしょう。
以下に、噛み合わせが悪い状態を放置すると発生する主な悪影響について紹介します。
磨き残し
歯並びや噛み合わせが悪い場合、歯磨きの際に磨き残しが出てしまいます。特定の場所に、歯ブラシが届かないためです。その結果、歯垢がたまり歯周病や虫歯の原因になってしまいます。
肩こりや頭痛
噛み合わせが悪い状態が続くと、肩こりや頭痛、腰痛などを引き起こす可能性があります。「咬筋(こうきん)」や「口輪筋(こうりんきん)」と呼ばれる、口の周りにある筋肉のバランスが崩れるためです。そのため、一部の筋肉に負荷がかかると、全身のさまざまな筋肉に異常をきたしてしまうでしょう。
顎関節症
顎関節症(がくかんせつしょう)とは、あごの関節に負荷がかかることで発症します。口が開きにくくなったり、あごに痛みを感じたりする状態です。日常生活に影響する可能性もあるでしょう。主な症状としては、以下になります。
- 口を大きく開けない
- 口を開けた場合に「カクッ」とあごの音が鳴る
- あごが痛い
咀嚼機能の低下
租借機能(そしゃくきのう)とは、食べる際に飲み込みやすい大きさに食べ物を噛み砕く行為です。悪い状態の場合、咀嚼機能がうまく働きません。そのため、食事の際によく噛まずに飲み込むことになり、腸や胃に負担がかかってしまいます。
滑舌
舌が動きにくかったり歯の間から息が漏れたりするため、滑舌に影響します。ラ行、タ行、サ行の発音がしづらい状況と言えます。食いしばりや歯ぎしり
無意識に歯を食いしばっていたり、歯ぎしりをしていたりする場合があります。食いしばりや歯ぎしりは、歯に大きな負担がかかっている状況です。次のような影響が考えられます。
- 冷たいものがしみたり歯が痛んだりする
- 起床した時に頬やあごがだるく感じる
- 歯がぐらぐらする
- 虫歯を治療した際の被せ物や詰め物がとれる
- 歯にひびが入ったりすり減ったりする
顔の変化
顔の筋肉のバランスにも影響します。いつも片側だけで噛んでいると、片側の筋肉だけが発達するためです。また、噛んでいる側の歯にも影響が出る可能性もあるでしょう。
精神的なストレス
噛み合わせはさまざまな悪影響が出るため、結果的に精神的なストレスを感じることもあります。頭痛・肩こり・あごの違和感などが継続すると、生活に支障をきたしてしまうためです。また就寝時に食いしばりや歯ぎしりがあると、目が覚めてしまうこともあるでしょう。睡眠不足の原因になる可能性があります。
噛み合わせをセルフチェックする方法
噛み合わせに違和感があった場合、セルフチェックで確かめることをおすすめします。以下は、セルフチェック方法の紹介です。
全体的な歯並びを確認する
歯の全体の並びを確認してください。鏡の正面から確認する方法です。
歯の並び方
前歯から奥歯までの歯全体が、ゆったりとしたアーチ型に並んでいるか確認します。口の中心から7本ずつ左右に歯が位置しているか、噛み合わせた時に上下の歯が2〜3mm重なっているかなども見て下さい。
歯と歯の間隔
歯と歯の間にすき間がないか確認します。歯の幅が狭かったり、顎が大きかったりした場合、「すきっ歯」と呼ばれる状態である可能性が高いです。
歯のねじれ
歯を一本一本確認し、ねじれている歯がないか確認します。歯がねじれている場合、他の歯に負担がかかったり、噛む力が弱まったりすることが考えられるでしょう。
歯の傾き
歯が生えている方向に傾きがないか確認します。歯の根っこは骨の中にあるため、見ることはできないのですが、歯の生えている位置や方向を確認することで傾きを見ることが可能です。
横顔を確認する
横顔を確認することで、噛み合わせやバランスを見ることが可能です。3面鏡や家族の助けを借りて確認してみましょう。
顔を横から見て、顎の先から鼻の先までを結んだ線を「Eライン」と呼びます。唇がEライン上または少し内側になっているのが理想です。Eラインよりも唇が出ている場合は、「出っ歯」「受け口」の可能性があります。
嚙み合わせが悪い歯の治し方に関するよくある質問
噛み合わせが悪い場合の治療について、よくある質問をまとめています。
噛み合わせは自然に治る?
噛み合わせが悪い状態は、放置しておいても自然に治ることはありません。さらに悪化することも考えられます。そのため、噛み合わせが気になる場合は、歯科クリニックを受診するのが良いでしょう。
噛み合わせが悪くなるのを防ぐには?
噛み合わせは、生活習慣によって悪化します。そのため悪い習慣を治すことで、悪化を防ぐことが可能です。悪い習慣とは、次のものになります。
- 食いしばり、歯ぎしり
- 舌で歯を押す癖
- 口の片側だけで噛む
- 爪噛み
- 口で呼吸
- 頬杖
噛み合わせが悪いかどうか確かめる方法は?
自身で確かめるには、次の方法があります。
確認方法 |
説明 |
噛んだ状態で歯並びを確認 |
鏡の前で「イー」と言って歯の状態を見ます。次の項目を確認してください。
|
口を開けて歯並びを確認 |
歯並びがきれいなアーチ状になっていることを確認してください。 |
横顔を確認 |
横顔で鼻と顎を結んだEラインに対して、唇が出ていないか確認してください。 |
噛み合わせを治すのに何ヶ月かかりますか?/h3>
治療方法によって、期間が異なります。以下は、主な治療方法と期間です。
治療方法 |
期間 |
ワイヤー矯正 |
1年~3年 |
マウスピース矯正 |
1年~3年 |
補綴治療(ほてつちりょう) |
1ヶ月~3ヶ月 |
外科的治療 |
手術前のワイヤー矯正:1年~2年 手術:1週間~3週間 手術後のワイヤー矯正:半年~1年 保定:2年~ |