歯科矯正で分割払いはできる?費用を抑える方法も紹介

歯列矯正を検討する際、「まとまった費用を一度に支払えるか」という不安を抱く方は少なくありません。
一方、近年はクレジットカードやデンタルローン、院内分割などさまざまな支払い方法が揃っているため、無理ない計画を立てやすくなっています。
それぞれの方法には手数料や利用条件が異なる点があり、仕組みを理解せずに契約すると負担が増える場合があるため、注意が必要です。
この記事では、歯科矯正で利用できる支払い方法と分割払いの基本情報、費用を抑えるための工夫を解説します。
治療を検討中の方が、安心して矯正を始められるようご活用ください。
歯科矯正で使える支払い方法

歯科矯正の費用は高額になりやすいため、どのような支払い方法を選ぶかで負担の大きさが変わります。
ここでは、矯正治療で利用される代表的な決済方法を3つ紹介します。
- ・クレジットカード
- ・デンタルローン
- ・歯科医院独自の分割払い(院内分割)
ご自身の状況に合った選択肢を見つけてください。
クレジットカード
クレジットカードは、手続きが簡単で、まとまった現金を準備しなくても利用できます。
ただし、カード会社ごとに利用枠や手数料が異なるため、支払い形式によって総額が変動する点には注意が必要です。
ここでは、クレジットカード決済のおもな3つの支払い方法を紹介します。
- ・一括払い
- ・分割払い
- ・リボ払い
医院によって決済可能なカードブランドの対応状況が違うため、通院前に確認しておきましょう。
一括払い
決済した金額を翌月または翌々月にまとめて支払う方法です。
手数料がかからないため、総額を抑えたい方に向いています。
以下に、基本的な情報をまとめました。
| 金利・手数料 | 基本無料(手数料なし) |
| 審査の難易度 | カード審査のみ |
| 手続きの早さ | カードを提示するのみ |
| 利用限度額・分割回数 | 上限枠内で決済可能 |
歯科矯正は治療費が高額になりやすいため、カードの利用枠が十分あるかを事前に確認しておくと安心です。
利用枠が不足している場合は、カード会社に増枠を申請するほか、複数枚のカードを併用する選択肢もあります。
支払い日や引き落とし口座に余裕を持たせておけば、トラブルを避けやすくなります。
分割払い
治療費を数回から複数回に分けて支払う方法です。
まとまった資金を用意しにくい方に適しています。
支払い回数を増やすほど月々の負担は軽くなる一方、その分だけ金利手数料が発生します。
分割回数が増えるほど、総額が高くなる点は理解しておくべきでしょう。
基本情報は、以下のとおりです。
| 金利・手数料 | 分割回数による(年8~18%程度) |
| 審査の難易度 | カード審査のみ |
| 手続きの早さ | カードを提示するだけ |
| 利用限度額・分割回数 | カード会社が設定した回数から選択(3〜24回) |
なお、カード会社によっては、分割払いに対応していない場合もあります。
また、医院によっては高額決済の分割払いに制限を設けていることも。
カードブランドの取扱状況とあわせて確認すると安心です。
リボ払い
利用残高に関係なく、毎月一定額を支払う方式です。
月々の負担が安定しやすく、一時的な出費を抑えたい方に向いています。
しかし、支払い期間が長期化しやすく、高い金利手数料がかかる点が大きな注意点です。
残高が減りにくいため、結果的に総支払額が膨らむケースも珍しくありません。
以下に基本情報をまとめました。
| 金利・手数料 | 回数・支払額にかかわらず一律(年15~18%程度) |
| 審査の難易度 | カード審査のみ |
| 手続きの早さ | カードを提示するだけ |
| 利用限度額・分割回数 | 上限枠内で決済可能 |
利用前にシミュレーションし、どの程度の期間と総額になるのかを把握しておきましょう。
デンタルローン
医療費専用のローンで、高額になりやすい矯正費用を計画的に支払いたい方に向いています。
一般的なカード分割より金利が低い傾向で、長期で利用しても総額を抑えやすいのが特徴です。
ただし、審査が必須で、年収や勤続年数によっては通過できない可能性もあります。
基本情報は以下のとおりです。
| 金利・手数料 | 借入金額や返済回数、信用情報などによる(年4〜10%程度) |
| 審査の難易度 | 信用情報の審査あり |
| 手続きの早さ | 数日必要 |
| 利用限度額・分割回数 | 高額・長期分割可能(30〜84回) |
申し込みから利用開始まで時間を要する場合が多いため、治療開始のスケジュールを考慮し、余裕を持って申請しましょう。
歯科医院独自の分割払い(院内分割)
院内分割は、歯科医院が独自に分割回数や支払い条件を設定する方法です。
ローン会社を介さないため審査不要なケースが多く、手続きが簡単なのが大きなメリットです。
金利が発生しない医院もあり、総額を抑えたい方にとって利用しやすいでしょう。
| 金利・手数料 | 無料または低金利の医院が多い |
| 審査の難易度 | 審査不要が一般的 |
| 手続きの早さ | 即日手続き可能 |
| 利用限度額・分割回数 | 院内ルールによる(3~12回) |
ただし、対応している医院は限られており、利用できる分割回数は少ない傾向です。
関連記事:インビザラインの費用相場とは?内訳と費用を抑える方法も紹介
歯科矯正で知っておきたい分割払いの基礎知識

分割払いの支払い方法や契約条件を把握せずに進めると、想定外の負担が生じることもあります。
ここでは、分割払いを利用する際に知っておきたい基礎知識を整理し、トラブルを防ぐためのポイントをまとめました。
- ・未成年者は親の同意が必要である
- ・支払いが困難な場合は速やかに連絡する
- ・治療の質には影響しない
- ・頭金が必要な場合もある
分割払いの経験がない方は、念頭に置いておきましょう。
未成年者は親の同意が必要である
未成年者が分割払いを利用して矯正治療を受ける場合、多くの歯科医院で親権者の同意を求められます。
契約内容に対する法的な責任を、未成年者だけで負うことが難しいためです。
とくにデンタルローンなど金融機関を介する支払い方法は、親権者の署名や同席が必要となるケースが一般的です。
支払いが困難な場合は速やかに連絡する
分割払いの途中で支払いが難しくなった場合は、歯科医院や金融機関へ早めに相談しましょう。
滞納が続くと督促手続きが発生し、状況が悪化する可能性も。
事情を伝えれば、支払い回数の見直しや一時的な猶予など、柔軟に対応してもらえるケースもあります。
治療の質には影響しない
分割払いを利用しても、矯正治療の質が下がることはありません。
支払い方法はあくまで会計上の手続きであり、診療内容や治療計画には影響しないためです。
どの支払い方法を選んでも、使用する装置や治療工程は同じ水準で提供されます。
頭金が必要な場合もある
分割払いを利用する際、歯科医院によっては契約時に頭金が必要となることがあります。
頭金を設定する理由は、初期費用をまかなうためや、長期の分割払いに伴うリスクを軽減するためです。
金額は医院ごとに異なり、数万円から数十万円まで幅があります。
歯科矯正の費用を抑える方法
歯科矯正は長期間にわたる治療のため、費用をできるだけ抑えたいと考える方は多いでしょう。
支出を最小限にするためには、公的制度の活用に加え、治療方法の選択や医院比較など複数の視点から検討する姿勢が欠かせません。
ここでは、保険制度や医療費控除のほか、クリニック選びのポイントまで幅広く整理しました。
- ・医療保険
- ・医療費控除
- ・その他の方法
それぞれ仕組みを理解し、活用を検討してみてください。
医療保険
矯正治療では、症例によって公的医療保険が適用される場合があります。
ただし、すべての治療が保険対象となるわけではありません。
適応条件が明確に定められているため、治療が対象となるか確認しておくことが重要です。
ここでは、医療保険が適用される場合とされない場合の違いを整理し、判断のポイントを解説します。
- ・医療保険とは
- ・保険が適用されるケース
- ・保険が適用されないケース
制度を理解し、上手に活用しましょう。
医療保険とは
医療保険とは、病気やけがの治療にかかる医療費の一部を公的制度で負担する制度です。
国民健康保険や社会保険に基づき、診療内容に応じて自己負担が軽減されます。
また、医科だけでなく歯科診療にも広く利用されており、診察、検査、処置など多くの項目が対象です。
治療費の3割負担が基本ですが、年齢や所得に応じて割合が変わる場合もあります。
矯正治療は自費診療となる場合が多く、診療の目的と内容によって、公的保険の対象となるかどうかが判断されます。
保険が適用されるケース
歯科矯正で医療保険が適用されるのは、治療目的が「機能の回復」に該当すると判断された場合に限られます。
代表的な例として、先天的な疾患に伴う嚙み合わせや顎の成長異常があげられます。
また、前歯がかみ合わない開咬や重度の受け口など、顎の骨格に起因する症状は手術と矯正を組み合わせた治療を要し、保険適用となるケースが多いでしょう。
適用の可否は専門医による診断が不可欠で、治療内容や症状の程度によって判断が分かれるため、早めの相談が重要です。
出典:厚生労働省「保険診療確認事項リスト(歯科)令和7年度改訂版」
保険が適用されないケース
歯科矯正で医療保険が適用されないのは、治療目的が「見た目の改善」と判断される場合です。
たとえば、以下のケースは保険適用外に該当し、自費診療となります。
- ・歯並びの軽度の乱れや口元の印象を整えることを主目的とする治療
- ・噛み合わせに大きな支障がなく、日常生活に明確な不都合が生じていない症状
- ・骨格的な問題がないにもかかわらず、美容的な理由で上下の歯列を整えるケース
判断できない場合は、事前に医師に相談しましょう。
医療費控除
一定額以上の医療費を支払った際に、所得税の負担を軽減できる制度です。
歯科矯正も要件を満たせば対象となるため、治療費が高額になりやすい場合は、活用する価値があります。
ここでは、医療費控除の基本と、歯科矯正で対象となる条件を整理します。
- ・医療費控除とは
- ・歯科矯正が対象となるケース
- ・対象となる費用内訳
- ・申請方法
制度を利用するための参考にしてください。
医療費控除とは
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税の負担が軽減される制度です。
本人だけでなく、生計を同じくする家族の医療費も合算できます。
控除額は医療費の総額から一定の基準額を差し引いて計算され、負担が大きい年ほど節税効果が高まる仕組みです。
利用するには確定申告が必要で、支払い金額の証明書類の保管が求められます。
歯科矯正が対象となるケース
歯科矯正が医療費控除の対象となるのは、治療目的が「美容」ではなく、「機能の改善」に該当すると判断される場合です。
たとえば、噛み合わせの異常が原因で咀嚼が困難なケースや、発音に支障がある症状などがあげられます。
このようなケースは、日常生活に影響が及ぶため、控除の対象になる可能性があります。
また、成長期の子どもは、顎の発育を適切に促すための矯正が必要と認められることも。
機能回復が目的の場合は、控除の対象となり得ます。
対象となる費用内訳
医療費控除に含められる費用は、「治療のために必要と認められる支出」であることが前提です。
以下に、対象となる費用内訳をまとめました。
| 分類 | 内容 |
| 診療関連費 | 診察料、検査料、相談料など |
| 治療に必要な装置費 | ワイヤー、マウスピースなど矯正装置の費用 |
| 処置・調整費 | ワイヤー調整、アライナー交換など |
| 通院交通費 | 電車・バスなど公共交通機関の運賃 |
一方、美容目的の追加オプションや、自宅でのケア用品など、治療に直接関係しない費用は認められません。
どの支出が対象となるか判断に迷うときは、領収書を保管し、申告時に確認するとよいでしょう。
申請方法
医療費控除を利用するためには、必要書類を揃えたうえで確定申告が必要です。
一般的な手順は以下のとおりです。
- 1.医療費の領収書・明細書(支払った金額と日付を確認できる書類)を準備する
- 2.医療費控除の明細書を、国税庁のフォーマットに沿って作成する
- 3.確定申告書を作成する
- 4.税務署へ提出またはオンライン申請(e-Tax)する
- 5.控除額が反映され還付金が振り込まれる
確定申告の手続きには、事前の準備が欠かせません。
その他の方法
医療保険や医療費控除だけでなく、治療内容の選び方によっても歯科矯正の費用を抑えられます。
ここでは、治療方針やクリニック選びの観点から、費用を抑えるための具体的な方法を整理します。
- ・矯正装置を厳選する
- ・部分矯正を検討する
- ・複数のクリニックを比較する
ぜひ実践してください。
矯正装置を厳選する
同じ歯列矯正でも、目立ちにくさや快適さを重視する装置は費用が高くなる傾向があり、シンプルな構造のものほど比較的リーズナブルです。
一方で、必要以上に高機能な装置を選ぶと費用が増えます。
自分に必要な治療範囲と優先度を整理したうえで、装置を選びましょう。
以下に、装置ごとの費用相場を整理しました。
| 装置の種類 | 費用相場(目安) |
| ワイヤー矯正(表側) | 60〜100万円 |
| ワイヤー矯正(裏側/舌側) | 100〜150万円以上 |
| ハーフリンガル | 90〜130万円 |
| マウスピース矯正(インビザラインなど) | 70〜120万円 |
また、装置ごとに追加費用の仕組みが異なるため、調整料や装置交換費用も含めた総額で比較すると判断しやすくなります。
部分矯正を検討する
部分矯正は、前歯や一部の歯列だけを対象とする治療方法で、全体矯正よりも費用を抑えられます。
治療範囲が限定されるため、装置の使用量や通院回数が少なく済み、短期間で完了するケースが多い傾向です。
ただし、噛み合わせに大きな問題がある場合や、動かしたい歯が複数にわたるケースでは適応外となることもあります。
費用面だけで判断せず、自分の症状に合った治療方法であるかどうかを、専門医に確認することが重要です。
複数のクリニックを比較する
歯科矯正の費用は医院によって大きく異なるため、複数のクリニックで見積もりを確認することが欠かせません。
料金体系が「トータルフィー方式」か「調整料方式」かによっても総額が変わるため、初診料だけで判断しないよう注意しましょう。
また、追加費用の有無や装置交換時の料金、保定費用まで含めて比較すると、治療後の支出を見誤りにくくなります。
さらに、治療計画や提案内容は歯科医師によって差があるため、症例写真や説明の丁寧さも確認しておくと安心です。
歯科矯正の費用の分割払いは可能!支払い計画を立てましょう
歯科矯正は分割払いを活用することで、治療費の負担を軽減しながら始められます。
クレジットカードやデンタルローン、院内分割など選択肢は多く、それぞれに手数料や条件が異なるため、仕組みを理解して選ぶことが大切です。
また、医療保険や医療費控除、利用する装置などによって費用を抑えられるため、治療前に全体の計画を確認しておきましょう。
支払い方法を整理しておくことで、無理のない範囲で矯正治療を進めやすくなります。
気になる点があれば、事前に歯科医院へ相談し、治療内容とあわせて費用面の不安を解消しておくと安心です。
ご自身の状況に合った支払い方法を選び、納得したうえで治療を開始できるよう準備を整えましょう。
監修者
森 健
Mori Dental Clinic 院長
<略歴>
- 2008年3月 明海大学歯学部卒業
- 2008年4月〜2009年3月 明海大学病院勤務
- 2009年4月〜2017年7月 都内歯科医院勤務
- 2017年9月〜 Mori Dental Clinic開院