歯並びが悪くなる5つの原因と健康への影響、自力でできる予防とは?

歯並びは人によって異なりますが、一般的に「歯並びが悪い」イメージは、「見た目が悪い」と思う方がほとんどです。
しかし、歯並びが悪いことで見た目以外にも健康に影響が出るなど、さまざまなデメリットやリスクが生じることをご存知でしょうか。
そこで今回は、歯並びが悪くなる原因と伴うリスク・自力でできる予防策について解説します。

1.歯並びが悪い5つの原因(理由)

まずは、歯並びが悪くなる原因について解説します。

1-1 先天的な理由で歯並びは悪くなる!?

歯並びが悪くなる原因としては、先天的な原因が考えられます。要するに、後述の原因ではなく、生まれつきの原因によって歯並びが悪くなることです。生まれつき歯の本数に過不足があったり、歯の形や大きさに問題がある場合などが該当します。
先天的な原因で歯並びが悪くなる理由としては、特定できるものとしては「遺伝や母親の病気」が挙げられます。歯の形や顎の大きさは遺伝する可能性が高く、親の歯並びが悪いと子供にもそれが遺伝してしまう可能性が高いです。また、妊娠初期に母親が病気を発症した場合に、その子供に先天的な歯並びの悪さをもたらす可能性があります。

1-2 歯並びが悪くなる後天的な理由

次に、後天的な原因で歯並びが悪くなることについて解説します。主に「子供の時の習慣・癖」が原因となることが多いです。

口呼吸

まずは「口呼吸による歯並びの悪さ」です。人間は通常、激しい運動や鼻炎などで鼻呼吸が困難な場合以外、鼻で呼吸をしています。しかし、「口唇閉鎖不全」「異常嚥下癖」など、口呼吸を常態化する原因がある場合、歯並びにも悪影響をもたらす可能性が高いです。
これは、唇の筋肉が緩んでしまうことが原因で鼻呼吸に問題があり口呼吸の習慣がある人は、唇の筋肉が緩んで「出っ歯」になるリスクを抱えることになります。

頬杖などの習慣

次に、「頬杖」など、歯並びを悪くする習慣がある場合です。頬杖の他にも「爪を噛む」「指しゃぶり」「横向きで寝る」などの習慣も、歯並びに悪影響となる可能性が高いです。習慣化せず、すぐに改善できた場合は良いのですが、癖というものは指摘されないと無意識に実行してしまうものです。
子供の顎の骨は未発達の状態であり、口や顎に関係する習慣はその成長に影響します。長くこれらの癖を治せていない状態が続くと、徐々に顎などに影響を及ぼし続け、歯並びを悪くしてしまうのです。

顎の発育不良

次に「顎の発育不良」が歯並びの悪さの原因であると考えられます。顎の発達が良好ではない場合、歯並びにも悪影響となります。通常は、咀嚼(噛むこと)によって顎の骨は刺激を受け、発達が促されます。日本食の中には硬い食べ物も多く、日常的な食生活において顎への刺激は確保されていました。
しかし、昨今の食生活においては柔らかい食べ物が多くなり、好んで食べられています。食生活の変遷は咀嚼の必要性を減らしてしまい、自然と咀嚼回数が減少するライフスタイルに移ってしまっています。結果、咀嚼の回数が減り、顎の骨の発達に必要な刺激が不十分となり、歯並びを悪くしてしまうのです。

乳歯の影響

次は、乳歯による影響です。例えば、乳歯が抜けるのが遅い、あるいは乳歯が虫歯になり、逆に乳歯が早く抜けてしまうなどの原因によって、永久歯の歯並びにも悪影響を及ぼします。
「乳歯は生え変わるもの」というイメージが強いため、子供の乳歯に何か異常を見つけても放置する親御さんも少なくありません。どうせ永久歯に生え変わるのであれば、治療するだけ無駄だろうと言う考え方は捨てなければなりません。

1-3 その他さまざまな理由も考えられる

ここまでに5つの大きな原因について解説してきました。しかし、実はこれら以外にも歯並びを悪くする原因が数多く存在します。
例えば、歯の数や形などが歯並びに影響を及ぼしている可能性があります。それ自体さまざまな症例がありますが、歯の数が通常の本数と異なる(多い場合と少ない場合)ケースや、虫歯などで歯を欠損している場合などがこれに該当します。
また、歯の治療状態によって歯並びが悪くなることも考えられます。治療を中途半端な状態で放置していたり、そもそも治療内容が不適切(治療技術や、治療方針の問題など)である場合に、歯並びに悪影響を及ぼします。

2.歯並びが悪いことによるリスク

では、歯並びが悪いことによってどのようなリスクが生じるのかということについて解説します。

2-1 見た目が悪くなる

冒頭でも述べていますが、「見た目が悪くなる」というリスクが考えられます。歯並びが悪くなることで、歯がガタガタに見えるなど、通常とは異なる見た目になる事が多いです。
見た目の悪さそのものは、本人に対して健康上のリスクをもたらすことはありません。しかし、「歯並びが悪い」という意識はつまり「コンプレックス」になってしまいます。笑った時に歯が見えてしまうのを恐れることで、表情が固く不自然になってしまいます。生活において自分の歯を見られたくないという意識が無意識に行動に現れる、ストレスを感じるなど、さまざまな悪影響に繋がる可能性があります。

2-2 虫歯や歯周病のリスクが高まる

次に、歯並びが悪いことで「虫歯」や「歯周病」といった口腔内のトラブルのリスクを高めるというデメリットがあります。歯並びが悪いことは、歯磨きにも影響します。通常よりも歯の並びが複雑になり、奥まで歯ブラシが届かなくなる箇所が増加します。これにより、虫歯や歯周病の原因菌にとって都合の良い環境になり、そのリスクを高めてしまうのです。

また、歯並びが悪いことで「かみ合わせ」にも悪影響を及ぼします。しっかりかみ合わせることができなくなると、咀嚼によって生じる唾液の分泌量が少なくなってしまいます。唾液には口腔内の自浄作用があり、唾液が少なくなることでその作用が弱まります。結果、口腔内の細菌が発生させるガスの影響も強くなり、口臭悪化の原因にもなります。

2-3 発音が悪くなる

次に、歯並びが悪くなることで「発音が悪くなる」というリスクが発生します。特に、歯並びの悪さの中でも「すきっ歯」や「開咬」、「下顎前突」などが起こっている場合、特定の行の発音がはっきりとしなくなる可能性が高いです。

2-4 胃腸に負担がかかる

次は「胃腸への負担増加」です。なぜ、歯並びの悪さが胃腸の負担になるかと言えば、歯並びの悪さが咀嚼の悪さに繋がるからです。咀嚼が不充分であることによって、消化に時間がかかります。そのため、胃腸に大きな負担がかかってしまうのです。
慢性的に胃腸に負担がかかってしまうと、将来的な胃腸症状のリスクを高めることになります。特に、歯並びの悪さによる咀嚼の不十分さの他にも胃腸に負担がかかる原因を保つ場合、胃腸関係の病気のリスクがさらに高まります。

2-5 顔が歪んでしまう

さらに、歯並びが悪いことによって「顔が歪んでしまう」というリスクも有るのです。歯並びが悪いとかみ合わせが悪くなり、噛む力の左右のバランスが悪くなります。噛むための筋肉にかかる負荷が左右で異なる状態になるため、顔が歪んでしまうリスクが生じるのです。

3.歯並びを悪くしない為の予防策は?

では、歯並びを悪くしないためにはどういった予防策が必要になるのでしょうか?

3-1 歯並びを悪くする習慣を改善する

まずは、前述した「歯並びを悪くする習慣」を改善することです。基本的に、子供時代に口や顎に関係する行動が習慣化している場合、歯並びに悪影響を及ぼす可能性があります。歯並びの重要性を子供が理解できるとは考えにくいため、親がしっかりと注意して悪癖を治させる必要があります。
子供の骨は大人ほど発達しているわけではありません。そのため、歯や顎の骨に影響を及ぼす習慣による影響を大人以上に受けてしまいます。そして、成長につれて骨が成長して安定していくと、習慣を改善しても歯や顎の状態がほぼ固定されている状態であり、そう簡単には改善できなくなってしまいます。

3-1-1 指しゃぶりをやめさせる

まずは「指しゃぶりをやめさせる」ということです。指しゃぶりは意外と歯並びへの影響が大きな要因の一つです。前歯への指による圧力が出っ歯やすきっ歯といった歯並びの悪さを引き起こしてしまいますので、きちんと注意しなければなりません。
乳幼児であればまだしも、5歳を過ぎても指しゃぶりの習慣を治せないと出っ歯などの原因になります。きちんと注意してもやめさせられない場合は、指しゃぶりを防止するためのグッズを購入することをお勧めします。

3-1-2 爪を噛む癖をやめさせる

また、似たような原因として「爪を噛む」事が挙げられます。これも前歯への圧力による歯並びの悪さの原因になりますので、早めにやめさせる必要があります。これも対策グッズがあり、健康に害は無いものの子供には苦く感じるマニキュアを塗布することで、自然と爪噛みの習慣が改善できます。

3-1-3 口を開ける習慣を改善する

小さい子供は口をぽかんと開けてしまう癖があることがあります。これは先程の「口呼吸の習慣」が原因であり、歯並び・かみ合わせを悪くしてしまいます。無意識にやっていることが多いのですが、明確な原因がある場合もあります。
口で呼吸するということは、本来の呼吸手段である「鼻呼吸」に問題がある可能性があります。主に鼻水による鼻詰まりが慢性化していることが原因であり、場合によっては耳鼻科で治療を受けなければならないこともあります。

3-1-4 頬杖をやめさせる

次に、頬杖をやめさせることです。顎への負荷から歯並びにも悪影響となります。食卓だと親がその都度注意できますが、勉強机に向かっている状況だと親の目を離れている事が考えられます。無意識にやっている事が多いので、繰り返し注意して頬杖をやめさせましょう。

3-1-5 寝方を改善する

次は「寝方の改善」です。問題となる寝方は「横向き」「うつ伏せ」です。どちらの寝方も頬や顎に負荷がかかるため、歯並びを悪くしてしまう原因となります。

3-1-6 親の習慣を改善する

そして、子供の癖を治させるためには、同じことを親がやっている場合は親が第一にその習慣を改善しなければなりません。
子供というものは、多くの場合で親の癖をトレースしてしまいます。つまり、親が歯並びを悪くする習慣をしている場合、子供がそれを真似してしまうのです。前述した癖の中だと、「頬杖」「寝方」などを真似される可能性が考えられます。
大人ですから、子供よりも歯並びの重要性と、その改善のための習慣の改善の重要性は理解できるはずです。子供の習慣・癖を改善したければ、第一に親が率先してそれを治さなければならないということになります。

3-2 歯医者で治療を受ける

しかしながら、習慣や癖を治しただけで歯並びの問題全てが解消できるというわけではありません。歯並びを悪くする原因には先天的なものもありますし、これを習慣改善だけで解消できるとは言えません。
本格的に歯並びを治したい場合は「歯列矯正」の治療を受ける必要があります。ですが、本格的に治療が必要な状況ではない、つまり予防段階でも歯医者を利用することの意味は十分にあります。

特に、子供の歯並びについては大人ほど大々的な治療を必要としません。顎の骨が未発達の状態であり、これを利用して徐々に歯並びを良くしたり、歯並びが悪くなることを防ぐための治療を実施できます。
また、虫歯などの口腔内のトラブルも歯並びの悪さをもたらします。そのため、子供の頃から歯医者の定期検診を利用することで、虫歯や歯周病といったトラブルが悪化する前に治療・対処できます。歯医者の定期検診では、歯並びを悪くする習慣があればそれについても対処できます。

このように、虫歯や歯周病の治療といった、歯の治療のために歯医者へ行くのではなく、そうしたトラブルの予防のために定期検診を受けることには歯並びに関するメリットが大きいです。大人もそうですが、子供の頃から歯医者に慣れておくことで、将来的に見ても「歯医者=怖い・行きたくない」というイメージを抱かずに済みます。

4.まとめ

歯並びが悪くなることは、先天性のものもあれば後天的な原因の中には非常に身近なありふれたものが多いことがわかります。これが習慣化することで歯並びを悪くして、将来的にコンプレックスになったり、その治療のために多額の医療費と治療期間を必要とすることになります。
多くの場合は子供の頃からの癖・習慣が原因となります。親がしっかりと注意して、歯医者の力も借りることでその影響を最小限に抑えることができます。

監修者紹介

森デンタルクリニック
院長 森 健

矯正費用の高さや期間の長さで矯正自体を諦めて欲しくないという思いから「前歯部分矯正専門の歯科医院」を開業。「笑顔」にこだわり、来院したすべての患者様が自分史上最高の笑顔を手に入れられるような治療を目指している。

2008年3月 明海大学歯学部卒業
2008年4月~2009年3月 明海大学病院勤務
2009年4月~2017年7月 都内歯科医院勤務
2017年9月~ Mori Dental Clinic開院

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