出っ歯を矯正するための費用と期間、安く抑える方法とは?

前歯が前突している状態を一般に「出っ歯」と言います。正式には「上顎前突症(上顎前突とも言う)」と呼ばれる症状であり、外見からコンプレックスを感じる人が少なくありません。また、機能面から見ても口腔内の乾燥をもたらす(唇が閉じにくいため)という点がデメリットになるため、治療を考えることをお勧めします。
しかし、歯科治療となれば、それなりの費用がかかることを覚悟しなければなりません。そこで今回は、出っ歯の矯正のために必要な費用や期間、それを安く抑える方法などについて解説します。

1.出っ歯矯正の値段(費用)はどれくらいかかる?

まずは、出っ歯を矯正するためにかかる費用の相場について簡単に解説します。

1-1 ブラケットで矯正する場合の費用

出っ歯の矯正費用と一言に言っても、利用する治療法によって費用相場も異なります。まずは、歯列矯正の代名詞とも言える「ブラケット矯正」です。これは、金属製の部品とワイヤーを用いて、ワイヤーの力を使って歯並びを改善する方法です。歯列矯正の中でも特に歯を動かす作用が強いため、重度の出っ歯にも対応できるというメリットがあります。
ブラケットで出っ歯を治す場合、かかる費用は片方の顎で50万円、両方の顎を治す場合は80万円ほど治療費がかかる傾向があります。ブラケット矯正の場合、審美性の高い治療法を選択する場合、費用はさらに高くなりますので注意してください。また、治療期間が長引くというデメリットがあります。

1-2 マウスピースで矯正する場合の費用

次は「マウスピース」で出っ歯を矯正する場合の費用です。透明な矯正器具を歯に装着して、少しずつ歯を動かしていく矯正方法です。ブラケット矯正とは異なり、患者さんが任意のタイミングで好きに着脱可能であるという点が特徴ですが、装着時間が短くなるとその分だけ矯正の効果も下がってしまいます。
費用相場はおよそ50万円~100万円かかり、治療期間が長引くとそれだけ費用もかさむリスクが高まります。また、マウスピース矯正自体にも種類があるため、治療効果や審美性の高い治療法を選択するほど費用がかさむことになります。

1-3 床矯正で矯正する場合の費用

次は「床矯正」で出っ歯を治す場合の費用相場です。床矯正は、総入れ歯のような形状の矯正器具を用いて歯を動かし、出っ歯を改善します。マウスピース矯正と同じく患者さんが好きなタイミングで取り外し可能であり、加えてネジを回すと患者さんの意思で矯正する力を調整できるという利便性もあります。
費用相場は30万円前後と、これまでも矯正治療と比較すると安く抑えられています。しかし、調整できるとは言え基本的な矯正する力はそこまで高くはありません。また、複数の歯を大雑把に動かすことが基本となるため、細かな調整が苦手であるという点もデメリットになります。

1-4 セラミック矯正で矯正する場合の費用

最後は「セラミック矯正」です。これは厳密には矯正治療ではなく、簡単に言えば「歯のつけ爪」のようなものだと考えるとわかりやすいです。歯に、セラミック製の被せ物を装着することで歯並びを改善する方法です。セラミックの素材としての特性も含めて、審美性の高い治療法として近年では多用されている治療法の一つです。
費用面についてですが、使用する素材や治療内容次第ではありますが歯1本あたりの費用はおよそ7万円~15万円ほどかかる傾向があります。ブラケット矯正等と比較して短期間で出っ歯を治せるという点が大きなメリットですが、被せ物を装着するためには「歯を削る」ことが必要になる点が大きなデメリットです。

セラミックの被せ物は、歯を削ってその部分に装着する形になります。そうしないと不自然に大きな歯に見えますし、出っ歯を改善する方法とはならないのです。ですが、歯を削るということは「健康な歯の寿命を削る」ことにもなります。虫歯などのリスクを抱えていない健康な歯を削らなければならないので、抵抗を感じる方も少なくありません。

2.値段(費用)を安く抑える為の方法

では、出っ歯を矯正するための費用を安く抑えるためにはどうすれば良いのでしょうか?

2-1 全体矯正よりも部分矯正

矯正治療の方法は、先程あげたものがメインとなります。他にもいくつか治療法はありますが、総じて言えることは「全体の歯並びを改善する」よりも「部分的な歯並びを改善する」という治療内容のほうが、治療にかかる費用も抑えられるということです。

先程の「ブラケット矯正」ですが、これは全体の歯並びを改善するだけではなく、前歯の前突だけを改善するための部分矯正も利用できます。同じ矯正器具を用いるのであれば、使用する器具の数が少ない部分矯正のほうが、治療にかかる費用も安く済むのです。
また、ブラケット以外だと「セラミック矯正」も部分矯正の一種であると言えます。矯正が必要な歯だけ削り、セラミック製の被せ物を装着するため、出っ歯の改善において不要な歯に対してまで治療を行うことはありません。セラミック矯正も数本の歯だけ治療対象となるため、費用が抑えられます。

2-2 症状次第では部分矯正では改善できない可能性も

ただし、患者さん一人ひとりの歯の状態次第では、選べる治療法に制限がかけられる可能性があります。前述した矯正治療の内容は、それぞれ使用する器具や費用が異なるだけではなく、歯を動かす力つまり「どれだけ歯並びを矯正できるか」という部分でも大きく異なります。例えばブラケット矯正は歯並びを改善する力が強いですが、床矯正はそこまで強くありません。

また、歯並びだけでなく「かみ合わせ」も悪い場合だと、選べる治療法が限定されます。歯並びの悪さと噛み合わせの悪さは同じく歯の問題ではありますが、歯並びを改善することが必ずしもかみ合わせも改善できる治療法であるとは言えません。例えばセラミック矯正は審美性の高い治療法である反面、かみ合わせに関しては考慮されていません。見た目の悪さは改善できますが、かみ合わせの悪さが問題になっている場合はそこまでは改善できません。
抱えている問題次第で、選択できる治療法がある程度は制限されてしまいます。同時に、治療方法によって異なる治療費に関しても、選択できる治療法が安い水準のものでなければ安く抑えることも難しくなるでしょう。

2-1 全体矯正よりも部分矯正

ここで一つ補足説明をしておきます。それは「矯正治療の費用」が病院ごとで異なるということです。矯正治療は自由診療であり、治療を受ける歯科医院ごとに料金設定は異なります。また、患者さんの症状次第で、同じ歯科医院で同じ方法の矯正治療を受ける場合でも費用は変動します。つまり、出っ歯で特定の矯正治療を受ける場合でも、患者さんと歯科医院によって矯正に必要な費用は大きく変動するということです。
ですが、ある程度の費用相場というものは存在します。具体的な金額については前述の通りある程度の変動がありますが、あまりにも相場とかけ離れている料金設定の場合は疑ってかかる必要もあります。昨今はネット上での口コミの拡散という要素があるため減っている印象もありますが、治療内容にふさわしくない高額な費用を請求される可能性も考えられます。

もちろん、相場よりも高額であっても「裏側矯正だから」「審美性の高い治療内容だから」というように具体的な理由があれば問題ありません。しかし、相場よりも高額な費用を請求される場合において明確な理由が提示されない場合は、いわゆる「ぼったくり」である可能性を捨てきれません。
相場に関しては既に述べている金額がおおよその目安になります。余裕があれば、通院に問題無さそうな歯科医院をいくつか回ってみて、カウンセリングを受けてください。初回のカウンセリングは無料で利用できる歯科医院も多く、患者さんの歯の状態を見ておおよその治療方針とそれにかかる費用を教えてくれます。数件の歯科医院でカウンセリングを受けて、費用が明らかに高いところは避けておいたほうが無難です。

逆に、費用が安すぎるのも問題であると言えます。「安かろう悪かろう」という言葉があるように、効果の期待できない治療を受けることになる可能性もあります。もし、出っ歯の矯正をかなり安く利用できる歯科医院があれば、ネットなどで口コミを見つけてみましょう。その歯科医院の公式サイトではなく、歯科医院の口コミを取り扱う外部サイトを見てみると良いでしょう。安くても、治療内容に関して値段以外に良い口コミが多ければ、その歯科医院を利用することを第一に検討することをお勧めします。

3.出っ歯矯正に必要な期間の目安はどれくらい?

次に、出っ歯を矯正するために必要な期間について解説します。

3-1 ブラケットやマウスピース矯正の場合は2~3年かかる

まず、一般的な歯列矯正の方法であるブラケットやマウスピース矯正で出っ歯を治す場合です。この場合、治療には2~3年、場合によってはそれ以上の期間がかかることもあります。徐々に歯を動かしていく矯正治療は、どうしても年単位での治療期間を要することになります。

3-2 セラミック矯正の場合は3~6ヶ月で矯正できる

次に、セラミック矯正で出っ歯を治す場合です。この場合は、短ければ2~3ヶ月で、長くても半年ほどで出っ歯を治すことができます。ブラケット等と異なりセラミック製の被せ物で見た目を改善する方法なので、非常に短い期間で出っ歯を治せます。すぐに出っ歯を治したい場合にお勧めの治療法です。
ただし、前述の通り歯並びは治せてもかみ合わせを治すことには効果を発揮しない治療法であると言えます。そのため、かみ合わせにも問題を抱えている場合は、この治療法では十分な効果を得られません。

4.出っ歯は自分で治すことができるの?

最後に、出っ歯を「自分で」治す事ができるかということについて解説します。

4-1 自分で出っ歯を治そうとするのは危険

結論から言えば、自分の力で出っ歯を治そうと思うのは極めて危険なことであると言えます。確かに、出っ歯というだけあって前歯を押せば治せそうなイメージを抱くことは当然かと思います。しかし、自力でこれを治すとなるとおそらく「指で押す」ことが中心となると思いますが、それだけで治るほど出っ歯は単純な症状ではありません。
ずれた家具の位置を直すことと出っ歯を押して治すことを同じイメージで捉えることはできません。もし、指で押すなどして出っ歯を治そうとすれば、歯や顎の骨を傷つけてしまう可能性が高いです。結果、前歯の寿命を縮める事になってしまえば、出っ歯を治すどころか、差し歯や部分入れ歯に頼らなければならない事になってしまいます。結果的に出っ歯は治せるのかもしれませんが、健康な歯を数本失ってまで自力で治そうとすることに意味を見出すことはできません。

4-2 予防は可能

ただし、治療ではなく「予防」であれば、自力でもアプローチは可能です。そもそも歯並びの悪さは、後天的なものであればその多くが「習慣」や「癖」によって生じるものです。出っ歯の場合であれば「指吸い」や「舌で前歯を押す」といった癖が原因となります。子供の頃は顎の骨が未発達で、こうした癖が習慣化していると骨の成長にもそれらの癖が影響してしまい、結果、出っ歯になってしまうのです。
なので、そうした癖がある場合はそれを改善することで、出っ歯を予防したり、これ以上前突しないようにすることは十分に可能です。特に子供の頃の癖は出っ歯を誘発しやすいため、子供がそうした癖を持っている場合は親が責任をもって止めなければなりません。

5.まとめ

出っ歯を治したい場合は、早めに歯科医院を受診することをお勧めします。どうしても治療には長い時間がかかってしまいますので、早く治したければそれだけ早く治療を開始しなければなりません。セラミックで治す場合でも長ければ半年かかりますので、すぐにでも治せると思っているのであれば早く治療を始めなければなりません。

見た目の問題もありますし、口腔内のトラブルの原因にもなりかねないのが、出っ歯の怖いところです。顎の骨がガッチリとした大人であっても、時間さえかければ出っ歯は治す余地があります。コンプレックスを抱いてストレスになったり、口の中の乾燥によって虫歯などを誘発するといったリスクをいつまでも抱える必要はありません。お金も時間も必要にはなりますが、出っ歯を治せる事にはそれ以上の価値があるのではないでしょうか。

監修者紹介

森デンタルクリニック
院長 森 健

矯正費用の高さや期間の長さで矯正自体を諦めて欲しくないという思いから「前歯部分矯正専門の歯科医院」を開業。「笑顔」にこだわり、来院したすべての患者様が自分史上最高の笑顔を手に入れられるような治療を目指している。

2008年3月 明海大学歯学部卒業
2008年4月~2009年3月 明海大学病院勤務
2009年4月~2017年7月 都内歯科医院勤務
2017年9月~ Mori Dental Clinic開院

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