すきっ歯(正中離開)はゴムで簡単に治療?矯正の種類と費用、期間を解説!

歯並びが悪い状態のことを「歯列不正」と言います。歯列不正にもいくつかの種類がありますが、その中に「すきっ歯」、専門的に言えば「正中離開」という症状があります。やはり歯並びが悪いため、さまざまなリスクを抱えるわけですが、歯科医院で矯正治療を受けるのは億劫だ、という人も少なくありません。

そんなすきっ歯ですが、「ゴムを使って治せる」となれば、歯科医院に通うよりも大幅に手軽だと思いませんか?手軽にコンプレックスを解消する方法とは果たしてどのようなものなのか、今回はすきっ歯とその矯正方法などについて解説していきたいと思います。

1.すきっ歯(正中離開)とは?

まずは、そもそもすきっ歯とは何か、という部分から解説します。

1-1 すきっ歯(正中離開)とは?

「すきっ歯」とは、「正中離開」や「歯間離開」とも呼ばれる、歯列不正の一種です。これらの名称からもイメージしやすいとおり、歯と歯の間に隙間が開いている状態です。通常、歯と歯の間に大きな隙間ができるのは虫歯や歯周病などの口腔トラブルを原因としますが、すきっ歯の場合は後述の原因によって自然に隙間が生じます。

1-2 すきっ歯(正中離開)になる原因

すきっ歯になる原因は、大きく分けると「生まれついての原因」と「悪癖による原因」の2つに分けることができます。

生まれついての原因は、例えば「歯が小さい」事が挙げられます。通常よりも数段小さなサイズの歯が生えることで、本来であれば生じない隙間が生じてしまいます。また、小さい歯どころか、そもそも「歯が生えてこない」ということもあります。遺伝などを原因として、本来28本あるはずの永久歯が数本不足してしまうのです。この場合、不足している歯の本数分の隙間が生じてしまいます。また、歯のサイズや本数に問題がなくても、歯と密接な関係を持つ「顎」が大きく、歯と顎のバランスが崩れることでもすきっ歯の原因となります。

悪癖によるすきっ歯は、例えば「頬杖」「舌で歯を押す」といったことが挙げられます。そこまで大きな力をかけていないとしても、これを長年継続することで徐々に歯や骨格に影響を及ぼし、最終的にすきっ歯やその他の歯列不正の原因となってしまいます。厄介なのは、日常的な癖によるものがほとんどで、まさか歯並びに影響するとは考えにくい癖が多いのです。そのため自覚が難しく、長年無意識のうちに歯並びを悪くしてしまうのです。

後者の場合だと、すきっ歯の原因となる癖を改善しない限り、何らかの方法ですきっ歯を解消しても再発のリスクを抱えたままとなります。

1-3 すきっ歯(正中離開)のリスク

すきっ歯を放置すると、歯と歯の間に隙間があるため、食べ物のカスが溜まりやすく、磨き残しにより虫歯の原因菌が繁殖しやすくなります。同様の観点から「口臭が悪化しやすい」というデメリットもあります。

もちろん、単純に「見た目が良くない」という点もデメリットとなります。これ自体は健康に対するリスクとはなりませんが、コンプレックスを抱いてしまうと日常生活に支障を及ぼす可能性も否定できません。

このように、すきっ歯には大小さまざまなリスクが発生します。放置していても何も良いことはなく、これらのリスクを解消するためにも早めに治療を開始する必要があります。

2.ゴムで簡単にすきっ歯を治す方法

次に、ゴムを使ってすきっ歯を治す方法について解説します。簡単に言えば、ゴムの「戻る力」を利用して、隙間がある部分の両側の歯にゴムを引っ掛けて矯正するという方法です。一見、理にかなった方法のようにも思えますが、実のところ極めて危険な方法なのです。

そもそも、歯列不正というものはそこまで単純なものではありません。すきっ歯の場合でも、単純に隙間が生じているというわけではなく、力技で解決できるようなものではありません。仮に、ゴムを使って隙間を解消できたとしても、歯や顎の骨に負担をかけてしまい、より重大な口腔トラブルの原因となる可能性があります。

歯列不正は、見た目だけではなく「かみ合わせ」も重要であり、ゴムで見た目だけ矯正できたとしても健康上は何も解決していないことになります。むしろ、余計に悪い状態にもなりかねません。同様の観点から、ゴム以外にも「針金をかける」「指で押す」といったことも危険です。

すきっ歯でお悩みの方は、ご自分で改善しようとするのではなく、お早めに歯科医院を受診し、矯正治療を開始することをお勧めします。後述する本格的な治療方法を知れば、決してその辺のゴム程度で解消できる問題ではないということがわかるはずです。治療期間や費用の問題もありますが、現在はすきっ歯の治療方法も数多く開発され、症状次第では治療方法を選択することもできます。

3.すきっ歯矯正治療の種類別の期間と費用

では、本格的に矯正治療を受けてすきっ歯を改善する際の方法について解説します。

3-1 ダイレクトボンディングですきっ歯(正中離開)を治療

まずは「ダイレクトボンディング」という治療法です。これは、歯科治療で用いられるプラスチックの「レジン」を盛り付けることで、歯と歯の間の隙間を埋めるという治療内容です。つまり、空いた隙間を元に戻すのではなく、埋めてしまうことで隙間を無くすということです。

レジンを直接盛り付けるという治療内容であるため、即効性が高いという点が大きなメリットとなります。通常、歯列矯正には数年単位の長い時間がかかりますが、レジンを盛り付けることですきっ歯を改善できるので、すぐに見た目を良くしたい場合にお勧めの方法です。

デメリットとしては、すきっ歯を埋めるためのレジンは経時変化を起こすということです。数年でかなり変色する場合もありますので、定期的に再研磨を受けなければなりません。また、保険診療の場合はレジンの色の自由度があまり無いという点もデメリットとなります。

3-2 ラミネートべニアですきっ歯(正中離開)を治療

次は「ラミネートベニア」です。これもダイレクトボンディングと同じように歯列矯正ではなく、人工物で隙間を埋めるというコンセプトの治療内容です。具体的には、対象となる歯の表面を薄く削り、そこに「つけ爪」のように薄いセラミック製の被せ物をするという内容になります。

この方法も、速やかに見た目を改善できるという点が大きなメリットとなります。また、レジンよりも変色に強く、自然な歯の色に近い仕上がりとなります。デメリットとしては、ダイレクトボンディングとは異なり「歯を削る」ことが必要であり、健康な歯の寿命を削ることになるという点と、あまり大きな隙間には対応できないという点です。

費用は、1本あたり10~15万円で治療を受けられます。保険がきかない治療内容であり、それなりの費用を覚悟しなければならないと言えます。

3-3 クラウンですきっ歯(正中離開)を治療

次は「クラウン」を用いた方法です。これもラミネートベニア同様に歯を削って被せ物をすることですきっ歯を解消します。削った歯にセラミック製の被せ物をして歯のサイズを変えて、隙間を埋めるという方法です。

やはり歯を削るという点が大きなデメリットになります。しかもラミネートベニアよりも歯を削る量が多くなり、それだけ歯の寿命を縮めることになります。しかし、被せ物によりすきっ歯を解消するだけでなく、歯そのものの見た目も改善できるという点はメリットとなります。費用はラミネートベニアと同水準か、それ以上です。

3-4 マウスピースですきっ歯(正中離開)を治療

ここからは、時間をかけての歯列矯正の分野になります。まずは「マウスピース矯正」です。透明なマウスピースを装着し、徐々に歯を動かしていきます。自宅での取り外しも可能で、歯のケアをし易いという点もメリットとなります。

ですが、取り外し可能であるという点はデメリットにもなります。マウスピース矯正は、1日20時間前後の装着時間を想定しており、装着時間が短いと十分な矯正効果を発揮しないことがあります。歯磨きのときや、どうしても他人にマウスピースを見られたくない(透明なので元々あまり目立ちませんが)場面などを除き、きちんとマウスピースを装着して矯正を続ける必要があります。

費用は、安く済めば20万円ほどで矯正が完了しますが、70~80万円程度の費用がかかる場合もあります。また、矯正には1年程度の期間が必要になる場合があります。

3-5 ワイヤーですきっ歯(正中離開)を治療

最後は「ワイヤー矯正」です。これは一般的な歯列矯正のイメージである金属製の矯正器具を用いた方法です。金属製の器具をワイヤーで引っ張り、その力で徐々に歯を動かしていきます。

マウスピース矯正と比較して、重度の歯列不正にも対応できるという点がメリットになります。同じ症状をワイヤー矯正とマウスピース矯正で治す場合、ワイヤー矯正のほうが早く矯正効果を発揮してくれることが多いです。最近では、審美性を高めた透明な器具や歯の色に近い色の器具を利用できる歯科医院も増えています。

デメリットとしては、第一に「目立つ」ことです。金属製の矯正器具は歯の色に溶け込むことはなく、目立ちます。取り外しもできないので、場面場面で着脱して対処することもできません。透明な器具などを使った審美性の高い器具の場合は、金属製の器具よりも費用がかかります。また、着脱できないため、歯のケアが難しくなるという点もデメリットとなります。

費用相場は、金属製の器具で80万円、透明な器具など審美性を高める場合は100万円以上の費用がかかることが多いです。期間は2年前後となります。軽度な場合はマウスピース矯正を利用することが多いので、どうしても治療期間は長めになります。

4.まとめ

すきっ歯は、自力で治せるようなものではありません。医療期間でも、数多くの方法ですきっ歯を治療する方法を提供しています。症状により利用できる方法とそうでない方法は異なりますが、きちんとした場所できちんとした治療を受ければ、すきっ歯は解消できるのです。

決して、ゴムや針金、指を使ってすきっ歯を治そうとは思わないようにしてください。確実に健康被害を被ることになります。「矯正治療を受けるほどでは・・・」と思っていても、実は虫歯などの口腔トラブルの温床になっている可能性があります。まずはお近くの歯科医院を受診して、どういった方法ですきっ歯を治せるのか相談してみてください。

監修者紹介

森デンタルクリニック
院長 森 健

矯正費用の高さや期間の長さで矯正自体を諦めて欲しくないという思いから「前歯部分矯正専門の歯科医院」を開業。「笑顔」にこだわり、来院したすべての患者様が自分史上最高の笑顔を手に入れられるような治療を目指している。

2008年3月 明海大学歯学部卒業
2008年4月~2009年3月 明海大学病院勤務
2009年4月~2017年7月 都内歯科医院勤務
2017年9月~ Mori Dental Clinic開院
2009年11月
NPO法人『カンボジアの健康及び教育と地域を支援する会(SCHEC)』に参加しカンボジアで歯科ボランティア活動
2012年10月~12月
臨床家のための実践ペリオセミナー ベーシックコース終了
2013年7月 エイディ研修会MTMコース終了
2013年8月 インプラント ベーシックコース NobleReplaceRの臨床導入

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